お十夜は「阿弥陀鼓音声王陀羅尼経(あみだくおんじょうおうだらにきょう)」に「十日十夜お念仏に励めば、必ず阿弥陀様を見ることができる」、浄土三部経の「無量寿経(むりょうじゅきょう)」に「この娑婆の世に十日十夜お念仏に励むことは、極楽浄土で千年修行するよりも優れている。」と説かれることを典拠にしています。
日本では15世紀のはじめに、平貞国によって最初の十夜法要が営まれました。貞国は、政所執事の平貞行の息子です。長男ではないので家督を継げないという無常感から、貞国は京都の真如堂にこもり、一心不乱にお念仏に励んでいました。三日目の夜が明け、出家する決心をした時、夢に僧侶が現れ、「あなたは阿弥陀様のお力により必ず来世は救われる。しかし出家するのは三日待ちなさい。」と告げました。すると翌日、将軍義教の命によって貞国が家督を継ぐことになったのです。この噂が将軍の耳に入り、その命によってさらに七日七夜の念仏が真如堂で続けられることになりました。この前三日と後七日を合わせた十日十夜のお念仏が日本でのお十夜の始まりです。
浄土宗では、明応四年(1495)に、現在の浄土宗の大本山の一つである鎌倉光明寺の第九世 観誉祐崇上人が後土御門天皇に招かれ、宮中で『阿弥陀経』の講義をされ、さらに真如堂の僧侶といっしょに引声念仏(いんぜいねんぶつ)を修し、勅許を得て光明寺で法要を行うようになりました。これが浄土宗でのお十夜の始まりです。
お十夜は、阿弥陀様が救いの道を示してくれたことに対する感謝の気持ちを表し、他の仏の浄土において、千年の修行をするよりも優れているこの世でのお念仏の功徳を、自らに積み、そして追善供養としてご先祖様にふりむける法要です。どうぞお寺に足を運んで法要に参加してください。
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